体を洗うのは、湯船に入る前に洗い場で済ませておくもの。そのあとの湯船は、何もしないための時間です。
静けさのための場所
お風呂では、あらゆるものがペースを落としてくれます。靴は入口で脱ぎ、服はカゴへ、スマホはロッカーへ。泳いだり、しぶきを上げたり、大声で話したりする場所ではありません。少し熱めの40〜42℃のお湯に浸かり、呼吸が落ち着いていくのを待つだけです。
湯船に体を沈めると、思わずはぁ〜と長い息がもれます。誰に教わったわけでもないのに、ほとんどの人がそうなるもの。体が「もうどこにも行かなくていい」と気づく瞬間です。
リラックスしようと意識する必要はありません。お湯が自然とほぐしてくれるので、身を任せるだけで十分です。
裸の付き合い
裸の付き合いという言葉があるように、お風呂には人と人との距離を縮める一面もあります。スーツも制服も肩書きもない湯船では、社長も学生も同じ立場。会話は小声でのんびりと。黙って浸かっているのも、ごく自然なことです。
湯治:時間をかけて癒やすお風呂
週末のスパ旅行が広まるずっと前から、日本には温泉に長く滞在して体を休める湯治の文化がありました。農家の人は収穫を終えると湯治場に通い、病気やけがの療養中の人は一日に何度も湯に浸かりました。本来の湯治は数泊ではなく、数週間単位です。東北には今も自炊部を残す古い湯治宿があり、宿泊客は自分で食事を作りながら、お風呂を中心に日々を過ごします。
湯治で大切なのは、強さよりも「リズム」。短い入浴と長めの休憩、質素な食事、早寝を繰り返します。何週間も休めなくても、取り入れ方はあります。観光地をめぐる代わりに同じ宿に2〜3泊し、朝晩お風呂に入るだけでも、湯治の雰囲気は十分に味わえます。別府の鉄輪では、街のあちこちの噴気口から湯けむりが立ちのぼり、お風呂が暮らしの中心にあったことを今も感じられます。この地域のタトゥーOKのお風呂は大分のタトゥーOK温泉に、温泉宿での過ごし方は温泉旅館の泊まり方にまとめています。
ゆっくり入浴の手順
- 丁寧に洗う。 洗い場は面倒な作業ではなく、お風呂時間の始まりです。お湯をかけ、石けんで洗い、すすぎます。
- 少しずつ入る。 足、脚、肩の順にかけ湯をしてから、30秒ほどかけて湯船に体を沈めます。
- 吸う息より吐く息を長く。 肩の力を抜き、お湯に沈めるイメージで。
- 5〜10分で上がる。 のぼせる前に湯船を出て、ベンチで体を冷ましてから、また入ります。
- 露天風呂は最後に。 顔には冷たい外気、体には熱いお湯。露天風呂ならではの心地よさです。
温冷交代浴
多くのお風呂には小さな水風呂があります。熱いお湯と冷たい水に交互に入る温冷交代浴は、脚の疲れが取れて頭がすっきりすると、常連さんにも愛好者の多い入り方です。最初は控えめに。体が温まったら、まず手足に水をかけ、次に脚、それから全身で入ってみましょう。水風呂は短めに。最後に温まって終えるか冷えて終えるかは、気持ちいいほうで構いません。心臓に持病のある方や血圧の高い方は、いきなり水風呂に入るのは避けてください。
サウナで「ととのう」
近年のサウナブームで、この感覚にはととのうという呼び名がつきました。サウナ、水風呂、屋外の椅子での休憩を2〜3回繰り返し、休憩中に訪れる深く、少しふわっとした落ち着きを味わいます。都市部のサウナはタトゥーに寛容なところも多く、温泉のルールで入れなかった人にとっては始めやすい選択肢です。
うまくととのうためのコツは3つ。水風呂の前に汗を流すこと。サウナは我慢の限界まで粘らず、しっかり温まったら出ること。そして休憩を省かないこと。外の空気を浴びながら目を閉じて座る外気浴こそ、あの感覚がやってくる時間です。近所の銭湯にも、サウナを備えたところが増えています。
おすすめの入浴時間帯
- 早朝。 旅館での朝風呂はささやかな贅沢。お風呂は空いていることが多く、冷えた朝の空気に立ちのぼる湯気も格別です。
- 夕食前。 宿に着いたらまずお風呂、浴衣に着替えて夕食へ。温泉地の定番の流れです。
- 夜遅く。 人が少なく静かです。寝る1〜2時間前に温まると、寝つきがよくなる人も多くいます。
- 食後や飲酒直後は避ける。 熱いお湯とアルコールが重なると、めまいを起こしやすくなります。夕食後は少し時間を空け、お酒を飲んだら入浴は控えましょう。
季節ごとの温泉
季節が変えるのは景色だけではありません。冬は舞い落ちる雪を眺めながら浸かる雪見風呂。温泉の醍醐味のひとつです。秋は山の湯が紅葉に彩られ、春は川沿いの温泉街に桜が咲きます。夏は早朝の入浴や、ぬるめの源泉が心地よい季節です。季節に合わせた温泉地選びは有名な温泉地ガイドを、お湯によって肌ざわりが違う理由は温泉の泉質を読み解くをご覧ください。
ジャグジーとの違い
ジャグジーが娯楽だとすれば、日本のお風呂は夕食後の散歩のような日々の習慣に近いものです。毎日同じ時間に入る人も多く、考えごとを整理する場所だという人もたくさんいます。特別な作法や心構えは必要ありません。熱いお湯と静けさ、そして急かされないいくつかの決まりごとがあれば十分です。
よくある質問
湯船にはどのくらい浸かればいいですか?
短めが基本です。5〜10分浸かったら休憩し、また入りましょう。のぼせたり動悸がしたりする前に上がってください。
温泉で目を閉じたり、瞑想したりしてもいいですか?
もちろんです。目を閉じて静かに浸かるのはごく普通のこと。頭はお湯から出し、のぼせないようにだけ気をつけてください。
一日に何度も入ってもいいですか?
旅館ではむしろそれが醍醐味です。到着時、寝る前、翌朝と何度も入る人がたくさんいます。入浴の合間には水分補給を忘れずに。
上がったあとはシャワーを浴びたほうがいいですか?
お好みで構いません。温泉の成分を流さない人も多いですが、強い酸性泉や硫黄泉のあとは軽く流しておくのがおすすめです。
タトゥーがあっても静かに入れるお風呂はありますか?
あります。都市部にはタトゥーOKの銭湯やサウナが多く、貸切風呂なら人目を気にせずくつろげます。貸切温泉ガイドを読むか、マップで近くのお風呂を探してみてください。