温泉には必ず、お湯の成分を示した温泉分析書が掲示されています。たいていは脱衣所の近くに額に入れて掲げられ、源泉の場所や温度、含まれる成分が記されています。すべてを読む必要はありません。いくつかのキーワードを押さえるだけで、どんなお湯かがわかります。
温泉法では、湧き出したときの温度が25℃以上であるか、特定の成分を一定量以上含んでいれば「温泉」と認められます。つまり温泉がすべて熱いわけではなく、冷たい鉱泉を沸かして入浴に使っているものも、れっきとした温泉です。
主な泉質
- 硫黄泉:ゆで卵のような独特のにおいがあり、白く濁っていることが多いお湯です。銀のアクセサリーは黒ずむので外しておきましょう。
- 塩化物泉:塩辛く、よく温まるお湯。湯上がり後もぽかぽかが長く続くことから「熱の湯」とも呼ばれます。
- 炭酸水素塩泉:肌がすべすべになることから美人の湯と呼ばれることもあります。
- 酸性泉:刺激が強く、小さな傷にしみることがあります。群馬の草津が有名です。肌が敏感な人は、湯上がりに洗い流しましょう。
- 含鉄泉:赤茶色のお湯で、タオルに色が移ります。有馬の「金泉」が代表的です。
- 単純温泉:刺激が少なくやさしいお湯で、温泉に不慣れな人や子どもにも向いています。
- 硫酸塩泉:透明なことが多く、昔から切り傷や打ち身、乾燥肌によいとされてきました。
- 二酸化炭素泉:細かい泡が肌にびっしりと付き、実際の温度より温かく感じられます。高温だとガスが抜けてしまうため、ぬるめの源泉が多いのが特徴です。大分の長湯温泉が有名です。
- 放射能泉:ごく微量のラドンを含むお湯です。名前は物々しいものの、古くから親しまれてきた泉質のひとつ。鳥取の三朝温泉が代表格です。
- 含よう素泉:最も新しく加わった泉質で、比較的珍しいお湯です。
複数の泉質にあてはまる温泉も多く、分析書には主な成分が並びます。たとえばナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉のような長い名前なら、「炭酸水素塩も多く含む塩辛いお湯」という意味です。
色でわかること
- 無色透明: 最も多いタイプです。透明だから薄いわけではなく、成分の濃い温泉にも透明なものはたくさんあります。
- 白濁・青白い: たいていは硫黄泉です。源泉が空気に触れてできる細かな粒子が色のもとです。
- オレンジ・赤茶色: 鉄分による色です。湧き出た直後は透明で、鉄が酸化するにつれて茶色くなることがよくあります。
- 黒・濃い琥珀色: 鉱物ではなく、太古の植物に由来する成分の色です。北海道ではモール泉、東京の一部では黒湯と呼ばれ、地下から汲み上げて使っている銭湯もあります。
- 緑色: 硫黄泉や酸性泉の中には、成分や光の加減で緑色に見えるものもあります。
天候や季節によって色が変わる温泉もあり、写真で見た色と当日の色が違うこともあります。
温泉分析書の見方
分析書には数字がずらりと並んでいますが、入浴する側がチェックすべき項目は限られています。
- 源泉名:源泉の名前です。ひとつの温泉地に何十もの源泉があることもあります。
- 泉温:湧き出たときの温度です。25℃未満が冷鉱泉、25〜34℃が低温泉、34〜42℃が温泉、42℃以上が高温泉です。
- 泉質:上で紹介した泉質名が書かれています。
- pH:3未満が酸性、3〜6が弱酸性、6〜7.5が中性、7.5〜8.5が弱アルカリ性、8.5以上がアルカリ性。アルカリ性のお湯は肌にぬるっとした感触があり、「美人の湯」と呼ばれる温泉の多くはこのタイプです。
- 適応症/禁忌症:古くから効果があるとされてきた症状と、入浴を避けるべき症状です。妊娠中の方や心臓に持病のある方は、禁忌症に目を通しておくと安心です。
知っておきたい用語
- 源泉かけ流し:源泉を循環させず、常に新しいお湯を注ぎ続けている状態。温泉好きが特にこだわるポイントです。
- 加水/加温:水を加えている/温めていること。源泉が熱すぎたりぬるすぎたりする場合によく行われます。
- 循環:お湯をろ過して循環させていること。大型施設でよく見られます。
- 消毒:主に塩素で消毒していること。大浴場では塩素のにおいがすることもあります。
加水・加温・循環・消毒の有無は掲示が義務づけられているため、かけ流しか循環ろ過かを見分けられます。
安全に入るために
- 水分補給を。 入浴の前後に水を飲みましょう。熱い温泉では、思っている以上に汗をかいています。
- 長湯しない。 1回10〜15分で十分です。合間に休憩をはさみましょう。強い酸性泉や硫黄泉では、さらに短めに。
- 飲酒後、満腹時、ひどく疲れているときは入らない。 倒れたり転んだりしやすい典型的な場面です。
- ゆっくり立ち上がる。 熱いお湯から急に立つと、立ちくらみを起こしやすくなります。
- アクセサリーは外す。 硫黄は銀を黒ずませます。ほかの金属を変色させる温泉もあります。
- ガスに関する注意書きを守る。 火山地帯の硫黄泉では、換気や立ち入り禁止についての掲示が出ていることがあります。必ず従ってください。
温泉の成分を肌に残すため、上がり湯をしない人も多くいます。刺激の少ないお湯なら問題ありませんが、肌が敏感な人は、酸性泉や硫黄の強いお湯のあとは洗い流しておきましょう。
泉質の違いを楽しむ
温泉は何百年も前から日本の民間療法として親しまれ、どの温泉にも適応症が掲げられています。ただし、治療法というより言い伝えくらいに受け止めておくのがちょうどいいでしょう。はっきり感じられるのは、とろりとしたお湯、ピリッとしたお湯、塩辛いお湯といった肌ざわりの違いです。温泉地をめぐってその違いを比べるのも、旅の大きな楽しみ。計画を立てるなら有名な温泉地ガイドがおすすめです。別府と長湯の両方がある大分なら、ひとつの県でまったく違うお湯を楽しめます(大分のタトゥーOK温泉もご覧ください)。
よくある質問
温泉のお湯は飲めますか?
「飲泉」と表示された、飲用が認められた場所でのみ飲みましょう。たいていは湯船とは別に飲泉所が設けられています。湯船のお湯は飲まないでください。
銀の指輪が黒くなったのはなぜですか?
お湯に含まれる硫黄成分が銀と反応したためです。たいていは磨けば元に戻りますが、アクセサリーは最初からロッカーに預けておくのが確実です。
透明な温泉は、色のある温泉より薄いのですか?
いいえ。色は含まれる成分の種類や空気との反応で決まるもので、成分の濃さとは関係ありません。
温泉に慣れていない人に向いている泉質は?
単純温泉や炭酸水素塩泉は刺激が少なく、肌への負担も軽めです。強い酸性泉は、自分の肌との相性がわかってから試しましょう。
銭湯は温泉ですか?
多くの場合は違います。ほとんどの銭湯は水道水を沸かしていますが、天然温泉を使い、温泉分析書を掲示している銭湯もあります。壁の掲示をチェックしてみてください。詳しくは銭湯の入り方をご覧ください。